ロルフィングとは?

 ロルフィングは、生化学者アイダ・ロルフ博士により開発された身体構造統合法です。10回のセッションを通じて筋膜システムに働きかけることにより、重力に対して無理のないバランスを取り戻し、身体の中に自由に動けるスペースを作っていくボディーワークです。
  身体の筋膜組織に優しく働き掛けていくことで姿勢が変化し、長い間身体の中で保たれていた肉体的・感情的なトラウマから開放され、それによって、身体の慢性的な不具合や痛みの軽減が期待されます。
 長い間、繰り返していた行動パターンに対して、身体の上を手技により優しく滑らせるようにアプローチし、神経系に無理なく働き掛けていくことで、ゆっくりと自由な状態の中で快適な変化を引き出していきます。

アイダ・ロルフ博士とは?

 ロルフィングは、アイダ・ロルフ博士の開発した手技技術を中心に、米国 The Rolf Instituteにおいて開発されました。
 アイダ・ロルフ博士は、1920年にコロンビア大学で生化学の博士号を取りました。
 そして、さらにロックフェラー研究所における有機化学の研究を通じて、身体に関する知識を深めました。
 彼女と彼女の息子は脊椎に問題を抱えていたため、彼女は様々な治療法を探しました。
 そして、身体の機能に対する構造の影響について学ぶため、そのことを扱った多くの治療体系(ヨガ、オステオパシー、カイロプラクティクス等)を調べました。
 そして、彼女自身もオステオパシーの治療家としての経験を積み、治療を続ける中で身体に備わっている構造的秩序の大切さに気づきました。
 彼女は30年以上にわたってクライアントの状態を全て記録し続け、その結果から骨でも筋肉でもなく、筋膜などの結合組織に対して働きかけることの有効性に気づきました。
 人間を箱に例えるなら、箱の中身(骨や筋肉や臓器)に関心が集まり、中身を保護しているクッション材(結合組織)はほとんど省みられることがありませんでした。
 彼女の発見は大きな発想の転換でした。
 こうして、彼女が構造的統合(Structual Integration)と呼んだ治療体系が生まれました。
 彼女の体系においては、身体が重力に対して最も効率的な姿勢がとれるように各部が配列されていることが重視されました。
 彼女はその体系を10回のセッションからなる一連の方式にまとめ、他の人々に教え、それは人々から彼女の名前をとって“ロルフィング(Rolfing)”と呼ばれるようになりました。
 その後、ロルフィングは単に病気を治すためのものというより、本質的に人間を全体として捉え、人々の健康の維持とその生命力の発展に向けてのアプローチであると考えられるようになりました。
 その結果ロルフ博士は、医療関係者だけでなく、彼女の理論と主義に興味を持つ個人に対してもロルフィングを教えるようになり、彼女が亡くなった1979年には200人以上の認定ロルファーが誕生していました。
 現在では、世界中で1000人以上のロルファーが活動しています。

ロルフ・インスティチュートとは?

 ロルフ・インスティチュート(The Rolf Institute of Structural Integration)の目的は、ロルフィングの恩恵を世界中に広げていくことです。
 それは、ロルフィングの高品質のトレーニングプログラムの提供と正規ロルファーの認定、認定後の更なる向上のための教育機会の提供、ロルフィングに関する調査研究とロルフィングの価値を広く人々に知ってもらうための教育活動によって達成されます。
 ロルフ・インスティチュートは、唯一のロルファー認定機関です。
 この認定はトレーニングプログラムの卒業生たちが、ロルファーおよびロルフムーブメントプラクティショナーであることを公表し仕事をすることを可能にします。
 ロルフ・インスティチュートは志望者及びトレーニング中の生徒、メンバーに対して高い基準を定めており、それは倫理規定や施術の標準化、教育プログラムの継続に反映されています。
 ロルフ・インスティチュートはカリフォルニア州とコロラド州の法律の下、1971年に非営利法人として設立されました。
 アメリカ合衆国政府によって非課税の教育及び科学研究組織として認められています。
 ロルフ・インスティチュートはコロラド州のボルダ(Boulder)に本部があり、アメリカの他の地域と同様に、ヨーロッパと南米、オーストラリアでもトレーニングを開催しています。
 学校としては、私立職業学校高等教育部門のコロラド支部(Colorado Department of Higher Education Division of Private Occupational Schools)により認可と規制を受けています。
 ロルフ・インスティチュートは機会均等の組織であり、人種、皮膚の色、信条、宗教、性別、性的嗜好、国籍や民族的起源に基づく差別をしません。
 現在、ロルフ・インスティチュートは2種類(ロルファーとロルフムーブメントプラクティショナー)の公式免許を認定しており、それぞれ個別にトレーニングが開講されています。
 そして、アメリカ事務局およびドイツのミュンヘンにあるヨーロッパ・ロルフィング協会、ブラジルのサンパウロにあるブラジル・ロルフィング協会のそれぞれで提供されるトレーニングには互換性があります。
 1979年には、ロルフィングのブランドをその他の全ての構造的統合の様式と区別するため、アメリカ合衆国特許局によりロルフィング(Rolfing)の商標権がロルフ・インスティチュートに付与されました。
 ロルフ・インスティチュートは、ロルフィングの登録商標とその派生物の所有者です。
 ロルフィングは重要な調査の対象になり、U.C.L.Aやメリーランド大学などの主要大学において研究が進められ、その明白な物理的・精神的効能が証明されています。

期待できる効果

 ロルフィングにおいて、治療は行いません。
 では、何を行うかというと、まずロルフィングでは身体をパーツの寄せ集め的な存在としてではなく、全体として構造的・機能的にバランスのとれたものとして捉えた上で、それが、地球の重力の中で自然な形で存在するためには、身体がどのような変化を望んでいるかを見極め、その変化を導き出すのがロルフィングです。
 ロルフィングでは、いわゆる正しい歩き方とか正しい姿勢というのは目指していません。
 あくまでもクライアントが日常生活を行っていく上で、機能的で心地よい姿勢・歩き方を目指しています。
 そのために、ロルフィングのセッションにおいて、歩くなどの動きの中で身体がどの状態で効率よくスムーズに動いているかを判断し、その上でクライアントとどのような身体になれば心地よく身体を感じられるようになるかを話し合いながらセッションを進めていくわけです。